Ring Jacketの魅力を探る Page2
ということで、パターンの機械の説明へ。
田野:凄いマシンやん!!自動で型紙が印刷されてる!!
敏腕パタンナー谷氏(以下、谷):ウチはコンピューターでパターンを管理して型紙を作成し、無地の生地は機械で裁断してるんですよ。
田野:あ、今日は宜しくお願いします!!
谷:宜しくお願いします。
笹本:彼はウチの敏腕パタンナーである谷氏です。パターンは彼に解説してもらいましょか。
谷:まず、ウチのジャケットの特徴は肩と袖のイセコミ量の多さにあります。日本人の体型は欧米人と違って胸が薄く、背中が広い傾向にあるので、それをパターンに反映させています。そうするとまず、前身頃より後身頃の方が生地の分量が多くなりまして、それを縫い合わせる時に差が生まれるんです。これが肩線になる部分の合わせなんですが、これだけ違います。
田野:結構違いますね!!Ringさんの特徴として知ってはいましたが、いざ実際に見るとかなり後見頃の生地を多めにとってますね。
谷:そうですね。そうすることで肩に無理なく肩甲骨部分の運動量が生まれ、腕を動かしてもストレスの無い着心地になるんです。
谷:こんな感じで身頃と袖が組み合わさるんですが、これも見て頂くとわかるように、明らかに袖の付け根の長さの方が身頃の袖付け部分より長いんです。これを職人の技術によりいせ込んで縫製することで、あの着心地が生まれているんですね。ちなみに、これが日本でも人気のイタリアの某有名ブランドのジャケットですが、前身頃と袖の付け根のラインを見るとそこまで内側に入っていないと思います。
が、ウチのジャケットは前を狭めに、後ろを広めにとっているので、かなり内に入っています。この違いが欧米人と日本人の体格に違いであり、どちらが優れているというわけではないんですが、胸板が薄い日本人が着て見栄えよく、より着心地良く感じられるのはウチのジャケットになるというわけなんです。
田野:なるほど、けっこうさらっと仰ってますが、かなりのこだわりポイントですよね。
谷:そうですね、この辺りはジャケットの見え方のイメージを大きく左右するところなんで、かなり慎重に、長い時間をかけて構築していったものになります。
今ではここを見ただけでRing製とわかって頂ける方も増えてきていると思いますよ。
田野:僕たちはインポートをメインに扱っていますけど、この辺りはやっぱり日本人体型を知り尽くしているRing Jacketに軍配があがりますね。
笹本:では、次は生地の縮絨機を見てください。
スイッチオン
田野:うわっ、凄い蒸気!!
笹本:実際は生地を下から吸い込みながらあてるから、こんなに蒸気が上がることはないんやけど、ここで生地をリラックスさせて次の裁断に進むねん。生地はロールに巻かれて輸送、保存されるから、その時に結構生地に負荷がかかってしまっていて、それを均等になおすためにこの機械を使用してるんやけど、縫製工場がこの機械を持っているところはほとんどないと思う。
田野:けっこう大きいし、高そう。
笹本:そうやね、縮絨専門にやっているところがあるから、ほとんどはそういったところに出すんやけど、そこでこんな感じに蒸気を当ててもまたロールに巻いて輸送されるから、全く意味がないというわけじゃないけどまた負荷がかかってしまうから・・・。ウチではこの後は絶対に巻かない。そうすることで生地のクオリティを最大限に高めてるんよね。
笹本:で、こんな感じになって、次の裁断にすすみます。裁断は基本的にはマシンで行っているから、生地やサイズによって個体差が生まれにくいように管理してます。
田野:最近でこそ少なくなって来たけど、イタリアの洋服って個体差の範囲が異様に広くて、サイズ違いやんってやつも個体差みたいな認識あったよね・・・。
笹本:そうそう、色違い着たら全然サイズ感ちゃうやんってなったりね。
田野:イタリアあるあるやね。たった一つだけの。
裁断ブースです。
笹本:切れてないように見えるかもしれへんけど、完全に切れてます。
田野:切れてるの?
笹本:切れてます。これだけ切れたら大したもんですよ。
田野:あっちの工程は?
笹本:無地はどうやっても柄が合うから大丈夫なんやけど、ストライプやチェックは柄がずれたら致命的で絶対に柄を合わせなあかんから、職人が裁断するねん。またなぜか御社のやつを裁断してるけど、ほんまにたまたまやで。
田野:でも無地と柄やったら全然手間というか、コストに違いが・・・。柄物はすごいコストかかってると思う。
笹本:ほんまやで、ようやく伝わったところで、価格交渉を・・・。
田野:・・・次は縫製かな?(汗)
笹本:そうやね、次は縫製の方にいこか。
田野:ここで裁断されたやつが縫製されていくということね。
笹本:ここからは工場長にも来てもらって、まずは前身頃を見てもらいましょか。
縫製ブースです。
工場長:これはすでに芯地を据えたものなんやけど、芯を据える時もグッと力を入れ、胸を立体的に仕上げてるねん。胸に立体感があると着た時の雰囲気が凄く良くなるからね。他にもかなり手仕事を入れてるけど、たとえば襟着けなんかもそうやね。上襟と下襟のつなぎ目になるところ、いわゆるゴージラインの部分は手まつりすることで柔らかくなり、首への吸い付きが格段に良くなるんですわ。
田野:細かいですね〜。でも、このこだわりがRing Jacketの素晴らしいところですもんね。
工場長:そうですね、やっぱり細かいところこそこだわっていきたいところやし、そこに手間と技術を惜しみたくないわな。
笹本:次はお待ちかね?の袖の部分です。
工場長:ここは僕らのキモになる部分やからかなり重要で、限られた職人しかできないところであり、最も企業秘密のところやね。
田野:いいんですか、こんな感じに写真に写させて頂いて・・・?
工場長:まあ、ちょっとくらいやったら。実際はここをグッと持ち上げてグッと縫って、ここでしごいてグイっとしてこう持ってきてこう立体的にするわけやね。
田野:凄い、グッとなってる!!(感動)
工場長:この工程はこのミシン一台でやってるから、ええとこ日産100着ってとこかな。
工場長:ほかにも、他の工場やったらさぼりがちな細かいところまでプレスをかけながら縫製するから、仕上がりにはかなり自信あるねん。
田野:自分達の店で取り扱ってるものとはいえ、そらRing Jacketの仕上がりが素晴らしいはずやわ。
笹本:エエでしょ!!次はプレスの工程をまとめて見てもらいましょか。
プレスの工程へ。
工場長:これは身頃の肩の合わせですわ。後ろをいせ込んでるから結構皺が入ってるでしょ。
工場長:裏はこんな感じですわ。
工場長:これにプレスをあてると・・・
工場長:とまあこんな感じになるわけやね。ピシッと合わせてるようになってるけど、実際は背中の方に多く生地をっとってるから、見た目はスマートでも凄く動きやすいジャケットになると。
田野:凄い!!(感動) めちゃシュッとなってますね!!
工場長:で、次は背中を見てもらおかな。
工場長:ポイントはプレスをあてる前に皺をピシッとさせ過ぎず、仕上がりの型をイメージしながら整えることやね。プレスをあてることで皺を取るだけじゃなく立体的に成型していくから、例えばワンシーズン着たジャケットとか、クリーニングに出してちょっと型が崩れてしまったな・・・というジャケットも僕らで新品のように型を復元することができるんですわ。で、プレスすると・・・。
田野:お〜〜!!
工場長:袖のところは元々はこんな感じ。
工場長:部分部分によって専用の機械が合って、それを使ってプレスしていくわけわけやね。
工場長:で。こんな感じでセットして・・・。
田野:いつものふわっと立体的なRing Jacketの袖になってる!!すごい技術ですね!!
工場長:で、腕もあてる。
工場長:襟部分も機械にセットしてあてる。
工場長:最終的に、機械であてられない細かな部分を手作業で行っていくと。その時にラペルのロールを出したり、より立体的に型を追い込んでいく。 そうすることで美しい仕上がりになるんですわ。
工場長:まあこんな感じですな。
田野:いや〜、凄かったです!!やっぱりこういった職人さんの仕事を間近で感じると、お客様に直接販売する僕達がこのこだわりをしっかりと伝えていかないといけないですし、そうしないと作ってくださっている職人の方に失礼ですね。ファストファッションが良い悪いではなく、こういった時代だからこそ人の手で細部までこだわって作られるものをしっかりとお客様に提案していきたいと強く思いますね。見てただけなんですが、凄いテンション上がって燃えてきました。
笹本:こっちとしてもそう思ってもらえる販売店さんに売ってもらえて幸せですわ。これでようさん売って、ようさんオーダーしてくんなはれや(笑)。
田野:最後突然商売っ気強すぎへん・・・?(笑)
笹本:(^^)
最後に
―いかがでしたでしょうか?どのブランドもそれぞれ独自のこだわりがあり、それに基づいて洋服を作っていると思いますが、Ring Jacketのこだわりが日本という枠を超え、世界に認められるクオリティになっている秘密がここにはありました。
生地の管理から縫製まで徹頭徹尾妥協なく仕上げられており、それを行う職人の手にこそ魔法が宿る・・・。服作りへの情熱がほとばしる魔法使いがたむろする(笑)現場、それがRing Jacketの貝塚ファクトリーなのです!!