gujiが展開するビジネススタイルに特化したセクションであるsalotto di guji(サロット ディ グジ)のオリジナルスーツは全てRing Jacket謹製であり、インポートスーツを除くとそこはRing Jacketの独占状態である・・・。
イタリア、イギリスなど世界中からセレクトするsalotto di gujiにあって唯一の国産ブランドであり、ISAIA、Belvestなどそうそうたるファクトリーのアイテムと肩を並べて陳列されるその仕立ての魅力に迫るインタビューです。
今回の登場人物はこちらの方々です。
←Ring Jacket セールスディビジョン
マネージャー 笹本 英利氏 |
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→guji代表取締役 |
Ring Jacketは日本一だと思います。(田野)
―それでは、宜しくお願いします。
笹本氏:宜しくお願いします。
田野:宜しくお願いします。
―先ずは、オリジナルスーツを展開するにあたってRing Jacketをパートナーとして選んだ理由をお聞かせください。
田野:実は僕と笹本君は中学校の同級生でして、二人とも同じ野球部だったんです。
笹本氏:そうそう、球拾いばっかりしてね・・・。
田野:中学一年生の時に三年生が引退して、人数が足りなくなって活動休止になったんよね。
笹本氏:そやったそやった。それで、休部状態になったんですけど、顧問の先生がかわいそうやからということで高校生の練習に参加させてもらうことになって、見事復活?させた代のチームメートなんです。
田野:だからあまりちゃんと練習できず、そもそも人数が足りなくて試合も出れないので、ポジションも無いみたいな・・・。
笹本氏:だから公園を走ったり球拾いしたり・・・
―すいません、そろそろ本題に・・・
田野:だから、昔の縁とよしみを頼ってRing Jacketに依頼したんです・・・、というわけではなく、そもそも笹本君がRing Jacketで働いていることを知らずにコレクションからオーダーさせて頂いたのが始まりなんです。
笹本氏:展示会でばったり会った時はほんまにビビったよね・・・。
田野:かなりビビった。当時からRing Jacketの仕立ては素晴らしいと思っていましたし、実は大手セレクトショップのオリジナル商品も手掛ける非常に優秀なファクトリーでしたので、僕達gujiのセレクトにも加わってほしかったブランドだったんです。はっきり言って、その縫製に対するこだわりと仕立てのクオリティはこれだけの規模で生産する中で日本一だと思いますし、実際本場イタリアの技術者も驚くレベルだと思います。
笹本氏:確かに、自分たちで言うのもあれなんですが、かなりこだわって縫製しています。まず、50年続いているということで技術の継承がしっかりと行われていますし、その間ヨーロッパの有名サルトや有名ファクトリーのジャケットを相当数解体し、研究することで技術を磨き上げてきた自負もあります。また、その繊細な手さばきをファクトリーとしての生産ラインに反映させる為の試行錯誤は相当なものであり、それを乗り越え実現してきた自信もあります。「日本製のスーツは10万円以下で」と判を押したように言われ続けてきたので、物ではけっして本場にも負けていない、むしろより手をかけて高いクオリティで作っているというプライドを持って作っていたものですから、そのステレオタイプには本当に苦しめられました。でもその悔しさをバネに成長してきたとも言えますね。
田野:急に真面目になったな・・・(汗)。僕達もRing Jacketの工場を何度か見学させて頂いたんですが、職人さんたちの目つきや手の雰囲気が全然違って、こちらが圧倒されるようなパワーを感じましたね。縫製工場にはあまり見られない秘密の機械などもあり、ここで作られるジャケットやスーツに間違いはない!!と自信が深まりました。
最初は断ったんです。(笹本氏)
―では、別注するに当たりこだわったポイントをお願いします。
田野:そこで、Ring Jacketのモデルをベースにgujiらしいエッセンスとバランスを加えさせて頂いて、日本人の体型に合わせたモダンなシルエットのスーツを作りたいと思ったんです。着心地はもちろん申し分ありませんので、細かな見え方の部分でかなりこだわりました。
笹本氏:僕達の仕立てのこだわりは首に吸い付く様につけられた襟と本場に負けないいせ込み量を持った袖付けにありまして、そうすることにより細身ながら腕の可動域をしっかりと取り、ストレスの無い着心地を実現しています。
田野:そう、まずはそこなんです。確かにRing Jacketの仕立ては本当に着心地が良い、そこは全くもって同感なんですが、雨の降り方(ナポリ仕立て特有の、アームホールに対して大き目の袖をギャザーを入れつつ立体的に縫い上げたイセ込み袖に見られる肩山のドレープ)に好みが出るというのと、今の日本のモダンクラシコなスーツスタイルにはちょっとトゥーマッチかなと。ということで、「アームの二の腕の部分を1cm細くしてほしい」と依頼したんです。そうすると、見事に断られました・・・。
笹本氏:それはしゃあないで。僕達もここにこだわりを持ってるし、そこを言われた通り「はいそうですか」とはでけへんやん。それやったら他にお願いすればええと最初お断りしたんです。
田野:それでもやっぱりRing Jacketの仕立てで別注スーツを作りたい!!と思っていましたので、なんとかお願いして5mm細くしてもらってサンプルを製作してもらったんです。そうすると、そんなに変わらへんな・・・(汗)と。
笹本氏:確かにあんまり変わらへんな・・・(笑)と。
田野:なんでやねん・・・(笑)と。その後、再度パターン交渉をして、結果8mm細くするということで落ち着きました。Ring Jacket特有の雰囲気を感じさせつつ、絶妙にモダンな雰囲気のバランスに仕上がったと思います。
笹本氏:僕達も小売りの店舗を構えて日々お客様のお声を頂き製品に反映をさせてはいますが、確かにええバランスやな・・・(笑)と。
田野:ちょっと着てみるけど(画像上)、やっぱり良い感じよね。
笹本氏:ばっちりやね。特にアーム(笑)。
田野:その他は、全体のバランスを見て胸囲・ウエストを調整し、着丈を少し短めに変更しました。実は今日着ているグレーのウインドーペーンのスーツもRing Jacket×gujiの新作で、生地はErmenegildo Zegnaのウールモヘアカシミアです。
笹本氏:その生地も結構スペシャルな生地で、日本に入ってきた分は恐らくですけどこの別注分のみやと思いますよ。
田野:マジで!?そういうの早く言って!!出来ればオーダーする時に!!(笑)
CARLO BARBERAに別注生地を作ってもらった時は、本当に嬉しかった!!(笹本氏)
―生地にもかなりのこだわりがあると伺っています。
田野:salotto di gujiではあくまでもリアルでエグゼクティブなビジネススタイルを提案していますので、毎シーズン必ずネイビーのジャケットはラインナップされるよう生地を選んでいます。Ring Jacketの提案する生地は本当に良いものが多く、毎回オーダーする時良い意味で大変なんですが、いつも仕上がりには満足しています。
笹本氏:僕達はここ数年生地のディレクションや生産も行うようになり、独自のファブリックも生産していますが、自らが作ることでなおさらヨーロッパの老舗ミルは良いものを作っていると再認識しています。伝統的に生地の生産に適している気候であったり、糸の選定や生地の保管による熟成など、各ミルで特徴は変わってきますが、特に僕たちはCARLO BARBERA社の生地が好みですね。
田野:もちろん僕達もCARLO BARBERAは大好きで、ISAIAなどの著名ブランドでも採用されている素晴らしいミルですね。
笹本氏:ネイビーは本当に奥が深い。このネイビーなんか、ほんまにええ色でしょ!!
田野:ほんまやね(それ俺が選んでオーダーしたからここにあるんやけど・・・)。〈←注:対談場所は弊社salotto di gujiにて行っております。〉その生地を選ぶのに、ネイビーだけで大げさではなく1000枚以上の生地見てるからね。やっぱりビジネススタイルにネイビーのジャケットは基本やし、そのベーシックなスタイルに最高のネイビージャケットを着てほしいっていう気持ちがある。
笹本氏:このネイビーのメランジ感とか、立体的な奥行きとか、ムードがあってほんまに最高やん!!
田野:そうやね(だから俺が選んだんやけど・・・汗)。
笹本氏:こっちのこのBARBERAのチョークストライプは実はRing Jacketの別注生地で、やっとのことでBARBERAに作ってもらったスペシャル生地やねん!!
田野:めっちゃテンション上がってるやん・・・(笑)
笹本氏:BARBERAと取引させてもらうようになってもう10年ちょっとになるんやけど、信頼関係が生まれてきた頃からちょいちょい別注お願いしたりしてたんやけど、数年は何かの理由をつけて断られてて。でも、今年やっと作ってくれたファースト別注生地がこのチョークストライプやねん!!英国調の堅そうな生地に見えてこの柔らかさ、で、ストライプの出方も抜群、グレーの中にちょっとネイビーが絡んだほんまに上品な色やと思う。ウール100%フランネルのタッチも最高。
田野:確かに凄く綺麗で、ビジネスにも対応できる品の良い華やかさがあると思うわ。
笹本氏:この生地のグレーベースは僕らも自社の小売店でやってるけど、ネイビーはこの別注スーツだけやしね。
田野:だから、スーツの型もウチだけ、生地もスペシャルな別注でウチだけってことやね。笹もっちゃん、ほんまにありがとう。
―ということで、残念ながら中学時代の野球部バッテリーが20年の時を経て偶然奇跡の再開を果たしたわけではなかったのですが、お互いの今後の健闘を祈り、固い握手で締めて頂きました。
この後はsalotto di gujiの生地セレクションについて二人に詳しく伺っていきますので、次回も是非ご期待ください。